ストレス環境の中心でCO2を放つ

A single population of olfactory sensory neurons mediates an innate avoidance behaviour in Drosophila
GREG S. B. SUH, ALLAN M. WONG, ANNE C. HERGARDEN, JING W. WANG, ANNE F. SIMON, SEYMOUR BENZER, RICHARD AXEL & DAVID J. ANDERSON


http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature02980_fs.html

Nature Sep 16,2004号AOP
Suh al.(Axel大先生LabとBenzer大先生Lab)の論文。
キイロショウジョウバエの記憶学習実験を行う際、著者らは,蝿にストレス(電気ショックや容器を激しく振るなど)を与えた後の空容器に,新しい何も学習させてない、自然(ナイーブ)な別の蝿が入りにくいのに気がついていた。ストレス環境中で蝿が放出したストレス物質が,別の蝿に感知され忌避行動を誘発したと考えられる。この行動は本能的なもの(生まれながらにもっている)で、発生過程で遺伝プログラムにより形成された神経回路により生じる行動である。触角第3節を除去するとこの反応は消失することから,触角で感知される(maxillary pulpsでは感じない)ストレス嗅物質受容により解発される行動と考えられる。麻酔した蝿を激しく振った容器には,この忌避行動誘発効果はないことから,神経活動によりストレス物質が放出されると考えられる。ガスマスによる解析により,その物質のうちの1つとしてニ酸化炭素が同定された。
ニ酸化炭素は触角第3節にある嗅感覚毛のなかにあるab1C嗅細胞に活動電位を発生させることはde Bryune et al.(Carlson Lab)により解明されており,その嗅細胞はなんと味覚受容体と推測されたGr21aを発現している。Gr21a-promoter Gal4, UAS-rpr(自殺タンパク)でこの細胞を死滅させると,ニ酸化炭素に対する活動電位が消失することから,Gr21aがニ酸化炭素受容体と考えられているが,同じ細胞に発現する別の受容体がニ酸化炭素を受容する可能性も現段階では完全に否定はできない。この嗅細胞は触角葉のV糸球体に投射しており,ニ酸化炭素刺激により,この糸球体のカルシウム濃度が上昇することをG-CaMPで著者らは確かめた。さらにGr21a-promoter Gal4,UAS-shi[ts]系により,温度感受性にシナプス小胞を枯渇させる方法を用いて,著者らはこのGr21a発現細胞情報経路を遮断するとニ酸化炭素に対する忌避行動がおきないことを確かめた。この情報経路はキノコ体経路を経由しないことをハイドロキシウレアによるキノコ体ニューロン除去個体での忌避行動の残存から明らかにした。

ということらしい。