嗅覚 電気生理

Yale Univ.のCarlson先生はショウジョウバエ嗅覚研究の第1人者だ。本当に素晴らしい研究をしている。

その論文では一般に、(水溶性ではあまりない)嗅物質を流動パラフィン炭化水素中分子量が大きく揮発しないもの)で希釈し(1%V/V)、紙フィルターにしみ込ませ、窒素流(二酸化炭素に対して一部の嗅細胞が活動電位をだすため;嗅覚で二酸化炭素を感じている。カなどもそう)を送り、刺激としている。
嗅感覚剛毛に電極をさし、活動電位を細胞外記録で記録している。1つの剛毛には1-4個の嗅細胞が存在しする。活動電位は,細胞外記録なので,振幅が神経細胞ごとに異なって記録されることを利用し、個々の嗅細胞の応答を区別できる。さらに各物質(10種ほど)に対する応答を1秒当たりの活動電位数で表し、そのパターンを剛毛毎(さらに含まれる嗅細胞ごと)に比較する。

これにより、剛毛のタイプ、(10種ほどのうちのどの物質に良く応答する嗅細胞であるかでみた)嗅細胞のタイプを識別し、判定している。

ab3A嗅細胞(ab3剛毛のA細胞の意味)はエチルブチレートによく応答するとか言うわけであるが、
ただここで注意すべきは、各物質の蒸気圧が大きくことなる場合、嗅覚受容体への有効刺激、すなわち気相中の分子密度は同じではないという点である。

ab3A嗅細胞は他の嗅細胞に比べて、(この刺激条件で)エチルブチレートによく応答するのであって、他の嗅物質よりエチルブチレートに良く応答するかは,物質の蒸気圧をしらないと簡単にはいえない。

味覚では同じモル濃度のショ糖とブドウ糖では、ショ糖の方が甘く感じるそうで、ショ糖の方がぶどう糖より甘味が強いといってもいい。
薄いショ糖と濃いブドウ糖では、ブドウ糖の方が甘く感じるが、だからといってブドウ糖の甘味がショ糖に比べ強い,などという人はいないだろう。薄いショ糖と濃いブドウ糖では、濃いブドウ糖の方が,甘いといえるだけである。
これが嗅覚の場合考えなければいけない点である。

物理化学の本をみても開放系非平衡では、気相の密度は簡単にはでないようである。