嗅覚 マウス 1嗅細胞1嗅物質受容体法則2

gene targeting(ノックアウト)では、染色体のあるタンパクAの正常遺伝子を異常遺伝子に置き換え、正常なAタンパクをもたず、異常なA産物(終始codon挿入やフレームシフトやexon破壊)をもつ個体を作りAタンパクの機能を解析するが、Or遺伝子の場合は嗅物質受容体が無くても実験室では大抵死なないので、ホモ接合の生存可能妊性のある個体(系統)を作ることができる。ショウジョウバエではこの手法でOr43bの機能解析がなされたが、マウスの場合は少し事情がことなることになるのではないか?

OrXをノックアウトしたホモ接合個体ではもちろんOrX正常タンパクを発現している嗅細胞は存在せず、OrX異常タンパクを発現している嗅細胞が存在する。ところが、マウスでは、前日の日記にかいたように、正常なOrタンパクがなければ、ほかのOrがnative Orとして発現してしまう。従って、本来OrXを発現するはずの嗅細胞はOrX異常タンパクとOrX以外の他のOr1種を発現する細胞に代わったことになる。だからOrXに結合するligand(嗅物質)がノックアウトでは決定できないのではないか?1つの受容体は複数の構造の似た物質に程度の差こそあれ,応答する。逆にいえば,1つの物質は複数の受容体に結合し,程度の差こそあれそれぞれの受容体を発現した嗅細胞に活動電位を生じさせる。つまりよほど特異的に受容してない限り,ある嗅物質Fを最もよく感知する受容体OrXをノックアウトしても,Fをかなりよく感知するOrYがあるので
,見かけ上Fへの応答の消失が,個体レベル,細胞レベル,受容体レベルで検出できないのではないか?

まえ紹介した東原先生の論文ではある嗅物質Fに応答する嗅細胞からsingle PCRでOrYをcloningし、それ+GFP遺伝子をウイルスにいれ
嗅物質Fに応答しない領域の嗅細胞に感染させ、GFPで緑に光る細胞が嗅物質Fに応答するようになることで、OrYのligandが嗅物質Fと判定したが、この時、応答をとった嗅細胞にはOrY以外のOrは法則に従えば発現してないことになる。この方法しかligandを決定できないのか?