嗅覚 ハエ Or49bと乳酸嗅覚

Or49b、Or33aはハエ成虫触角第3節の2−3の嗅細胞でのみ発現している.

乳酸CH3CH(OH)COOHは蒸気圧の非常に低い物質である(不斉炭素が1つあるのでD体とL体の2つの鏡像異性体光学異性体)が存在することは高校教科書にも載っている)。
それにもかかわらず、蒸気圧の高いエタノール、酢酸などと同じ
濃度域で強い誘因性を示すことが都立大の布山先生により1976年に
報告されている。このとき用いている乳酸はD体とL体の等量混合物である(有機合成ではDのみ、Lのみはまだ合成できていない。第2の野依先生求む!!)。

似た物質のピルビン酸CH3COCOOH,プロピオン酸CH3CH2COOH、
2プロパノールCH3CH(OH)CH3をふくめた4種物質の蒸気圧は122℃で
それぞれ、乳酸は1mmHg、ピルビン酸14、プロピオン酸29、2プロパノールは760よりはるかに上(つまり1気圧の地球では気体)である。(25℃でそれぞれ0.08?、1、2.4、高い(今わすれた)である。)

これらの物質に対するハエの行動応答を、さらに乳酸についてはD乳酸、L乳酸に対する行動応答で調べおもしろいことがわかった。
夏京都で行われるISOT(味と匂い国際シンポジウム)で発表することにした。参加費が高い4万円!!(+飲み代12000円)+宿泊費別
だが、、。

L乳酸はピルビン酸、プロピオン酸と同じモル濃度液で応答検出されはじめ、同じように濃度上昇にともない誘因率が増加する(2プロパノールはまったく誘因性がない)
幼虫成虫ともD乳酸とL乳酸同モル濃度液を用いた行動応答に大きな差があること、
従来しられていたプロピオン酸に加え、L乳酸にも成虫、幼虫は誘因されること
もしかするとOr49bと乳酸嗅覚が関係するかもしれないこと(あくまでも可能性だけだが)
など。

布山先生が3ペンタノンCH3CH2C0CH2CH3(ということは逆相関応答性を示す乳酸にもということになるのだが)の嗅覚行動応答に70%ほどの重みで関係すると算出した第2染色体右腕のある領域にOr49bが存在するのは大変興味深い。発現嗅細胞数も少なく、alleleあたりの発現量が少ないので、欠失染色体を用いた+/Dfと+/+個体の行動応答で差が検出されたのかもしれない。gene targetingをやってみる必要がある。

http://www.leffingwell.com/chirality/chirality.htm
光学異性体に対し嗅覚が異なる例はたくさんしられている。
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