Lewcok and Reed (2004)PNAS,101, 1069-1074をみて、おもしろいことに気がついた。

彼等は相同組換えによりtransgeneをM71とM72間に挿入した
M72-(M4プロモーター+taulacZリポーター)-M71という相同染色体A(1本)と
M72-(M71+IRES+tauGFPレポーター;M71座にノックインしたもの)という相同染色体A'(1本)を
もつ個体(double heterozygous;A/A')を調べた。すると、嗅上皮では2つのリポーター両方でラベルされる嗅細胞はなかった(200細胞調べたそう,Interestinglyと彼等は書いている)。ところが、嗅球で2つのリポーターはある1つの糸球体中でみられた。つまり各リポーターをそれぞれ発現し、M71をnativeORとして発現している2種の嗅細胞が存在し、M71の投射する同じ糸球体に軸索を送っていたのである。
この結果は、次のように説明できるのではないか?

  • 1つの嗅細胞でA'相同染色体上のM71がnativeORとして選択された場合(tauEGF発現する)、A相同染色体上のM71発現系はその細胞で発現しない(抑制される)。なんたってmonoallelicなんだから。A相同染色体上のM71発現系により嗅上皮ゾーンI(M71が発現し、M4は本来発現しないゾーン)でA相同染色体上のtaulacZが発現すると考えられるから(2/28日記参照)、従ってこの細胞でlacZが発現するということはない。
  • 一方、別の嗅細胞でA相同染色体上のM71がnativeORとして選択された場合、A相同染色体上のM71発現系により嗅上皮ゾーンIでtaulacZが発現する。A'相同染色体上のM71発現系はその細胞で発現しない(抑制される)。なんたってmonoallelicなんだから。従ってtauGFPはこの細胞で発現しない。
  • 以上のようにして嗅上皮では2つのリポーター両方でラベルされる嗅細胞はないこと、一方、M71による糸球体選別により、ある糸球体で2つのリポーターは1つの糸球体中でみられる。のだろう?ただこの論文のM71の各allele発現細胞は同じ糸球体内で終末部が近接しているが、上のIshii et al.(2001)ではMOR28の各allele発現細胞は同じ糸球体中離れているそうだ。