しかし、古典的な染色体操作も非常に奥が深い。Elmore et al.(2003)はOr47bを相同組換えによるgene targetingによりもたないノックアウトハエを作った。Carlsonもこの論文に名を列ねているが、彼のグループはDobrista et al.(2003)でOr22a,bを持たないハエ(デルタハロ)として、Or22a,bを含めて8個の遺伝子を全く持たないハエ系統をWelteから貰って使っている。

8個もの遺伝子が無くても、この系統は致死ではなく、生殖能力もあり、系統として確立できていることには驚かされるが、この系統は

Df(2L)dp[79b] 22A2-3;22D5-E1領域(2L)を欠失している染色体と
Dp(2;2)dpp[d21] 22A2-3;22F1-2相当領域(2L)が52F領域(2R)にも挿入された染色体を持つハエの染色体の組換えから作られた。
つまり

  • A-(B C Dを欠失)-E-F-と
  • A- B- C- D- E-C-D-F-

の染色体をもつハエで減数分裂時に相同染色体の組換えがE付近で起れば,

  • A-(B C Dを欠失)-E-C-D-F-

という染色体ができる。これはB部を欠いている染色体ということになり、これを2本もつハエがデルタhaloなのである。
B部が8つの遺伝子部であることは先にのべた。Or22aは22A5領域にあり、これを含む8遺伝子を、この染色体が持たないことはPCR法でどのプライマーで増幅される断片がないか、あるかを調べてわかったのである。細胞学的地図の22A2-3と22A5とがあわないようなことはよく起こる。