2004-03-14から1日間の記事一覧

人体への投与の観点から最近では点滴液にはL乳酸のみ含有する物が使われています。DL乳酸混合は使われなくなってきました。

この用途と、手術用ポリマー糸として乳酸ポリマーを使うため(一定時間後人体内で溶けてなくなる)、L乳酸の需要は高くなっています。L乳酸は有機化学でこれだけを合成できず、発酵で作らせ精製しています。従って比較的安く手に入りますが、D乳酸は恐ろしく…

ハエゲノム中にはD乳酸脱水素酵素遺伝子は予測されていません。ヒトなどほとんどの動物もL乳酸脱水素酵素でL乳酸を作ります。タコ、イカだけが変わっているのです。ちなみに高等植物にはタマネギなどD乳酸の多いものや、キャベツ、ポテト、アスパラガスなどDとLと同じ位含むものもあります。

調べたら過去にMartin AW, Jones R, Mann T. D(--)Lactic acid formation and D(--)lactate dehydrogenase in octopus spermatozoa. Proc R Soc Lond B Biol Sci. 1976 May 18;193(1112):235-43. Mann T, Martin AW, Thiersch JB, Lutwak-Mann C, Brooks DE,…

動物にはL乳酸が多く、L乳酸脱水素酵素がヒト、ハエで見つかってますが、なんとタコ、イカ筋肉にはD乳酸が多いそうです

Ohmori et al. (1997) Zoological Science, 14, 429-434 D-lactate is present in much larger amount than L-lactate in Cephalopods and Gastropods.さらにそのD乳酸脱水素酵素のアミノ酸配列(1次構造)も近く発表されるそうです。(大森先生私信)。大…

さて例えば短距離走では、無酸素に近い状態で筋肉は、解糖系によるATP合成を行うわけですが、この時、ピルビン酸CH3COCOOHとNADHと水素イオン(H+)から、乳酸CH3CH(OH)COOHとNAD(+)を産生します。つまり2H分が乳酸の形で捨てられます。そうしないと量の少ないNAD(+)が再生できず、解糖系が止まってしまうからです。

この反応を触媒するのが乳酸脱水素酵素ですが、これにはL乳酸を産生する酵素とD乳酸を産生する酵素の2種類がありますが、微生物には両者がみられ、両酵素とももつ微生物もいます(ラセマーゼといってL乳酸とD乳酸を変換する酵素もあるということですが、こ…

真面目なノンフィクションです。筋肉でタコイカはD乳酸を作り、ヒト、ハエはL乳酸を作ります。タコイカだけが特別なのです。

動物は筋肉を動かして、捕食者(プレデター)から逃げたり、獲物を追ったりしなければ生存できません。従って、筋肉では無酸素に近い状態でも、なんとかして動き続けるため(ATPが必要)、ATPを無酸素でも産生できます。いわゆる解糖系によるATP合成です(酸…