2.OrX遺伝子の上流塩基配列+OrXのCDS+IRES+リポーター遺伝子をくっつけ動物個体に導入する(つまり外来OrX蛋白とリポーター蛋白の発現している細胞が可視化される)。挿入場所は1と全く同じM71とM72の間のある点。するとリポーターの発現は本来,内在OrX発現が見られる領域(ゾーンII)だけになる。つまりOrXの正常mRNA配列か正常タンパクが存在すると、他のOrが共発現しないように見えるというわけである。

    • (ここでOrX遺伝子の上流塩基配列+OrYのCDS+IRES+リポーター遺伝子をくっつけ動物個体に導入するとどうなるか興味があるが、、、)。IRES(Internal Rebosome Entry Site)とはOrX遺伝子の上流塩基配列のプロモーターにより転写開始されたmRNAにおいて,5‘よりのOrXのCDS先頭付近にリボソームが結合するだけでなく、3’よりのリポーターのCDS先頭付近にもリボソームが結合してリポーターを翻訳させるのに使う配列らしい。これがないと5’よりのタンパクはできても,3‘よりの第二のタンパクができない。
    • 1のtransgeneの場合には内在OrX(M4)が本来発現するzoneIIと別の(内在OrX(M4)が本来発現しない,M71,M72が発現する)zoneIでもリポーターと他の(OrX以外の)内在Or(M71,M72,K22だけしか示してないが)が発現するのは上に述べた通りである(ちなみにK22はゾーンIIに発現しM4と同じゾーンである)。つまり1のtransgeneの場合,OrX遺伝子の上流塩基配列は,zoneIでも,(非特異的発現の可能性も完全には否定できないが),挿入された近くにあるM71転写調節系等の影響をうけて,下流リポーター遺伝子の転写翻訳を起こしている。ところが,2のtransgeneの場合には、なぜzoneI領域でのリポーターの発現が抑制されるのか?説明が論文中にない。同じOrX遺伝子の上流塩基配列を使い,同じ染色体領域に挿入したのにである。「第一のOrプロモーターとしてtransgeneが選択され,正常なOrX(M4)もできたから」という解釈はzoneIでは成り立たない。We infer that the M4 receptor protein in the labeled cells prevents coexpression of M71 and other ORs.と論文中にあるが、このzoneIでは内在及び外来OrXは発現してないのは本来のOrXの発現,リポーターの発現がzoneIでみられないことから明らかであるから,OrX以外の内在Or発現による,リポーター及び外来OrXの発現抑制ということになるのではないか(文末仮説参照)。論文には何もかいていない。